ガソリン車の排水?
燃料電池自動車は、水素と酸素を反応させたときのエネルギーを動力源としますが、同時に水を排出します(燃料電池車での排水?参照)。
ガソリン車は走行時にどの程度の水を排出しているのかが気になりました。
計算には、ガソリン車の燃費が必要になります。株式会社イードのe燃費(イーネンピ)によれば、2019-2020年でガソリン車部門一位は、スズキ自動車の「スイフト」のようです[1]。その燃費は、18.4 [km L-1][2]。逆数を取ると、1 [km]あたりに必要となるガソリンは54.3 [mL]とわかります。
次に、ガソリンを燃焼するときに、単位量あたりどの程度の水が排出されるかを計算します。ガソリンの化学式が必要になりますが、ガソリンは炭化水素の混合物なので、その平均をとって計算するのは煩雑です。そのため、オクタン価100の指標として用いられる2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)[3]を例としてみます。
イソオクタン
分子式:C8H18
モル質量:114.23 [g mol-1]
密度:0.690 [g mL-1]
イソオクタンの燃焼は次式であらわされます。
C8H18 + 12.5 O2 --> 8CO2 + 9H2O …(1)
消費したイソオクタンの9倍の物質量に相当する水が排出されることになりますね。
以上の数値を使って、ガソリン車が走行時に輩出する水の量を計算してみます。イソオクタン54.3 [mL]は、37.5 [g](=54.3 [mL] * 0.69 [g L-1])に相当し、これは0.328 [mol](= 37.5 [g] / 114.23 [g mol-1])です。また、水のモル質量は18.0 [g mol-1]ですね。結果、53 [g](= 0.328 [mol] * 9 * 18.0 [g mol-1])の水を、ガソリン車は1 [km]走行あたりで排出していると分かりました!
ちなみにこの53 [g km-1]という値は、燃料電池自動車の場合 (燃料電池車での排水?参照) で計算した59 [g km-1]とほとんど変わりませんね。燃料電池自動車が多くの水を排出して問題になる、ということはなさそうです。
参考文献
- 株式会社イード, "『e燃費アワード2019-2020』を発表 実燃費ランキング、総合部門1位はトヨタ『アクア』", https://www.iid.co.jp/news/press/2020/031801.html (accessed on 2020/02/01)
- e燃費, "e燃費アワード2019-2020", https://e-nenpi.com/award/award20192020/ (accessed on 2020/02/01)
- 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油・天然ガス資源情報, "オクタン価 [おくたんか]", https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1000297/1000376.html (accessed on 2022/02/01)