再生可能エネルギーの利用にまつわる問題点
太陽光発電、風力発電など、再生可能エネルギーを積極的に使っていく – これは、今や全世界が掲げる目標になっていますね。太陽光発電や風車の設置をし続ければ、問題は解決する…かといえば、そんなに単純な問題ではありません。大きな問題点がいくつかあります。例えば、
- 再生可能エネルギーが取れる場所と、我々がエネルギーを使いたい場所が違う
- 再生可能エネルギーが取れる時間帯と、我々がエネルギーを使いたい時間帯が違う
- 発電以外のエネルギー利用を直接まかなえない
などです。それぞれについて、種々方策が考えられいます。
まず問題そのものをしっかり理解してみましょう。今回は、問題点の一番目に述べた再生可能エネルギーの空間的な偏在性についてまとめます。
エネルギーが使われているのはどこか?
次の図[1]を見てみてください。これは、NASAが提供している夜間写真です。
光っている部分は、夜間も光がともっている場所、つまり我々が生活している場所ですね。ヨーロッパやアメリカ、インド、オーストラリアや東アジアが特に明るくなっているのが分かるかと思います。こういった場所が、電気を多く使っている場所の代表地点になります。
再エネがとれるのはどこか?
では次に、再生可能エネルギーが多くとれる場所、つまり発電に向いている場所はどこなのかを見てみましょう。
日本におけるデータは環境省がまとめています。以下に、代表的な再生可能エネルギーの潜在量をまとめた図[2]を示します。
例えば太陽光発電では、日本列島全体に分布していますが、特に北海道や九州で多いですね。水力と洋上風力は日本海側に多く、陸上風力は北海道の北側に潜在量が多くあります。
2つの図を比べてみると、再生可能エネルギーの潜在量が多い場所と、エネルギーの消費地が合致していないことが分かりますね。せっかく発電しても、その電力の供給地が需要地と離れています。
「日本には電線が張り巡らされているのだから、そこにつなげばよいのでは?」と思われるかもしれませんが、それにも問題が多くあります。今回は詳しく述べませんが、電圧の問題や、前述した時間的偏在性、そして送電に伴うエネルギー損失が挙げられます。
ではどうするかというと、いったん電気エネルギー以外のものに変換するというアプローチが考えられています。何に変換するかというと、化学物質にし、つまり化学エネルギーへ変換します。そうした物質は「エネルギーキャリア」と呼ばれ、代表的なものは、水素、アンモニア、メチルシクロヘキサン、メタンがあります。これらはエネルギー密度が高いため、より小さい重量もしくは体積に多くのエネルギーを蓄えることができるので、運びやすいんです。このエネルギーキャリアをどううまく使っていくがが、再生可能エネルギーの積極的な導入に向けてはカギとなってきます。
参考文献
- NASA, “Earth at Night”, https://earthobservatory.nasa.gov/features/NightLights (accessed on 2022/02/03)
- 環境省, 平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査, 2011.