エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その1
前回のポストでは、エネルギーキャリアとしての水素に触れました(エネルギーを運ぶ:エネルギーキャリアとして水素?参照)。簡単にまとめておきますと、
- 再生可能エネルギーを利用できる場所・時間(エネルギー供給地)と、我々がエネルギーを使う場所(エネルギー需要地)には差異
- 需給ギャップを埋めるため、再生可能エネルギーで発電した電力を一度他のエネルギー形態へ変換し、貯蔵する、もしくは需要地へ輸送するという考え
- 重量当たりのエネルギー量で見た場合、水素はかなりエネルギー密度が大きく魅力的な物質
- しかし、水素の沸点は20.5 [K](=マイナス253度)と低く、標準状態で気体状態(=運びにくい)
では他の物質を使うか、、、というと、簡単にそうはなりません。というのも、「水素」は作り方、使い方という点でも、優れた特徴を有します。例えば、以下が挙げられます(それぞれ、他のポストで詳述する予定です)。
- 作り方:水素は様々な方法で作ることができる
- 使い方:様々な化学反応の原料としても使える
- 使い方:燃料電池の原料として発電に使える
- 使い方:火力発電の燃料として利用することもできる
ですので他のエネルギーキャリアを考える場合でも、水素を軸に考えることが多いです。
水素および水素ベースのエネルギーキャリアについて、ここから見ていきます。いかにその体積重量密度を小さくするか、を考えます。
水素のままなんとか小さくする=圧縮する(=加圧)、液体にする(=冷却)
水素を圧縮する場合、350気圧とか700気圧とかの高圧に押し込みます[1]。この時にカギとなる技術は、その高圧に耐える材料で容器をつくること、です。水素の場合には、水素脆化の問題もあるので、容器に求められる要求は非常に高いです。トヨタ自動車のMIRAIでは、高圧水素タンクが搭載されていますね[2]。液化した場合、水素のエネルギー密度は2.8 [kWh L-1]および39.4 [kWh kg−1]となります[3]。水素を沸点(=約-253度)以下に保つことが必要であり、技術的なハードルが大きいです。
日本では、液化水素の海上輸送をすることで、オーストラリアから水素を持ってくることを検討しています。技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構 (HySTRA)と呼ばれ、豪州と日本におけるパイロット水素サプライチェーン実証事業が進められています[4,5]。
その他の方法については、次回以降のポストでまとめていきます。
参考文献
- U.S. Department of Energy, “Physical Hydrogen Storage”, https://www.energy.gov/eere/fuelcells/physical-hydrogen-storage (accessed on 2020/03/27)
- トヨタ自動車, “スペック・装備” https://toyota.jp/mirai/spec/ (accessed on 2020/03/27)
- E. Akiba, 本燃焼学会誌 2011, 53, 16.
- 川崎重工業株式会社, “世界初、液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が進水(Online)”, https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20191211_1.html (accessed on 2020/03/27).
- 技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構, https://www.hystra.or.jp/about/ (accessed on 2022/02/03)