エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その2
前回(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その1)の続きです。水素を軸にして、いかにその体積重量密度を小さくするか、を考えます。
物理的に、他の物質にくっつける(→水素吸着材料)
この場合、水素は分子として吸蔵され、化学反応によって他の物質へ転換されるわけではありません。それを可能とする「水素吸着材料」に求められる条件は、多孔質であったり、単位重量当たりの表面積が大きいことです。検討されている代表的な物質には、炭素材料や、MOF(metal-organic framework)があります[1]。
化学的に、他の物質にくっつける(→金属水素化物、ケミカルハイドライド)。
金属水素化物では、以下の反応を利用します:
金属 + 水素 <--> 金属水素化物 …(1)
「金属」と「金属水素化物」の熱力学的安定性から、操業温度と圧力が決定されます。代表的な金属水素化物には、NaAlH4があります[2,3]。
ケミカルハイドライドの場合も、同じような反応を利用します[4]:
化合物 + 水素 <--> 水素化物(=ケミカルハイドライド) …(2)
右方向への「水素化反応」で水素を貯蔵し、左方向への「脱水素反応」で水素を放出します。代表例の一つはアンモニア/窒素であり、以下の反応式であらわされます:
N2 + 3 H2 <--> 2 NH3 …(3)
アンモニアとして「水素」を運び、脱水素反応によって水素を取り出します。
もう一つはメチルシクロヘキサン/トルエンです。
C7H8 + H2 <--> C7H14 …(4)
メチルシクロヘキサン(C7H14)として「水素」を運び、脱水素反応によって水素を取り出します。でてくるトルエン(C7H8)は回収して、水素供給地で水素化することによって、メチルシクロヘキサンを再生します。
次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合 (AHEAD)によって、メチルシクロヘキサンを活用した国際間水素サプライチェーンの検証が進められています。そのチェーンは、以下の通りです[5,6]:
- ブルネイダルサラームでトルエンを水素化してメチルシクロヘキサンとする
- 海上輸送によって日本へ運ぶ
- 日本で脱水素反応をして水素を取り出す
- 残ったトルエンはブルネイダルサラームに戻す
...と、ここまで水素をそのまま使う(圧縮・液化)、他の物質にくっつける、他の物質へ変換する、という方法を見てきました。次のポストでは、それらを比較してみます。
参考文献
- U.S. Department of Energy, “Sorbent Storage Materials”, https://www.energy.gov/eere/fuelcells/sorbent-storage-materials (accessed on 2020/03/27).
- U.S. Department of Energy, “Metal Hydride Storage Materials”, https://www.energy.gov/eere/fuelcells/metal-hydride-storage-materials (accessed on 2020/03/27).
- R.C. Bowman, B. Fultz, MRS Bulletin 2002, 688.
- U.S. Department of Energy, “Chemical Hydrogen Storage Materials”, https://www.energy.gov/eere/fuelcells/chemical-hydrogen-storage-materials (accessed on 2020/03/27).
- 千代田化工建設,”CHIYODA テクニカル・レビュー” 2020.
- 千代田化工建設, “SPERA水素®千代田の水素供給事業” , https://www.chiyodacorp.com/jp/service/spera-hydrogen/innovations/ (accessed on 2020/03/27).
- 次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合, https://www.ahead.or.jp/jp/research.html (accessed on 2022/02/03)