水素の作り方 -その1:現行の作られ方と価格

持続可能な社会…響きは良いですが、その実現には多くの課題がありました。エネルギー源として化石資源に頼らず、再生可能エネルギー等を積極的に利用していく必要があります(我々はどのくらいエネルギーを消費しているのか?参照)。そして、再生可能エネルギーの供給と、我々のエネルギー需要は、時間的にも空間的にも完全一致しません(再生可能エネルギーの利用にまつわる問題点参照)。その需給ギャップを埋めるべく、エネルギーキャリアの利用が検討・実証されています(エネルギー貯めるいろんな方法を比較(その1その2その3その4)参照)。

今回は、エネルギーキャリアの代表例である水素についてみていきます。特に、現在市場に出回っている水素はどうやって作られているのか、という点に焦点をあてます。

水素の製造ルートとシェア

これまでに、我々は水素を色々な形で作り、使ってきました。現在はどういった形で作られているのでしょうか?次の図で、水素供給ルートの内訳と、その価格を示します。各種報告書のデータ[1-4]を基に作成しました。製造比率は、2014年のデータとなります[1]

share-of-primary-energy-hydrogen-production-2014

化石資源由来の水素
図中の95%を占める大部分があります。これは、化石資源由来の水素です。例えば、天然ガスの主成分であるメタンを、水蒸気と反応させることで水素が製造されます。
CH4 + H2O --> 3H2 + CO …(1)
この反応は、水蒸気改質と呼ばれます。ここで生成される一酸化炭素COは、続く水性ガスシフト反応によって、水と反応してさらに水素を製造します。
CO + H2O --> H2 + CO2 …(2)
このほか、石炭のガス化によって水素を作られますし、また石油から得られるナフサを水蒸気と反応させることでも水素を得られます。こうやって作られる水素は、安いことが特徴です。1 [kg]あたり約1ドルです。

非化石資源由来の水素
化石資源以外から、将来的には水素を製造する必要があります。「持続可能」な方法で作ることを考える場合に、例えばバイオマスや水から水素を作る方法があります。ここでは、現在工業的にも操業されている電気分解による水素製造を見まていきます。水の電気分解(水電解)だと、再生可能エネルギー由来の電力を使ってそのまま操業できるので、持続可能性という意味では将来的には適したオプションといえます。一方で、現在の電解プロセスとしては水素製造を狙ったものではなく、苛性ソーダ製造の電解プロセス等で副生されるものが多いです。図中の5%に相当する部分が、電解による水素製造量です。そうして作られる水素の価格は、なんと1 [kg]あたり5ドル!統計によってばらつきはありますが、おおむね化石資源由来のものの4-6倍の値です。

価格競争力がなく、相当なインセンティブが与えられなければ、現状では電解水素は使われにくいですね。

ちなみに電解で得られる水素は、化石資源由来のものと比べて純度が高いというメリットがあります。高純度水素が求められるところで広く使われていると思います。

究極的には、

  • 再生可能エネルギー由来の電力を使って
  • 水の電気分解によって水素を作る

という形が、炭素中立という点では理想となります。

蛇足ですが、最近は水素を色分けして呼ばれます。化石資源由来のものがグレー水素水電解で作るものがグリーン水素、そして化石資源由来であっても、出てくる二酸化炭素を回収・活用するものは、ブルー水素と呼ばれます。

参考文献

  1. Shell, Shell Hydrogen study Energy of the Future?, 2017.
  2. P. De Luna et al., Science 2019, 364, eaav3506.
  3. S.E. Hosseini et al., Renewable Sustainable Energy Rev. 2016, 57, 850.
  4. M. David et al., J. Energy Storage 2019, 23, 392.

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