我々はなぜ「化石資源」を使ってきたのか?
石油、天然ガス、そして石炭などの化石資源に、我々の社会構造は大きく依存していました。しかし今、carbon neutral - 炭素中立- は、もはや世界的な目標として掲げられ、脱化石資源は大きな潮流となっています。単位炭素あたりの二酸化炭素排出量が大きい「石炭」について、脱石炭は多く叫ばれる一方で、同じくEUタクソノミーは天然ガスを含めるなど、「天然ガス」は許容されています[1]。こうした化石資源を、我々はなぜ使ってきたのでしょうか?
これに対する端的な答えは、化石資源が高エネルギー物質だからといえます。今回の記事では、特にエネルギーに焦点を当てて、化石資源の有用性をまとめます。
次の図に、化石資源の利用フローを示します。上部のものほど、エネルギーが大きいとして示します。
エネルギー源としての利用(図中左回り)
エネルギーとしての利用で、代表的なものは電力ですね。天然ガス火力、石炭火力、そして石油火力発電があります。いずれも、化石資源を燃やして、その熱で水から蒸気を作り、その際の体積膨張を利用してタービンを回すことで発電しています。「化石資源を燃やす」は、以下の発熱反応に対応します。
化石資源 + 酸素 --> 二酸化炭素 + 水 …(1)
言い換えれば、エネルギー的に"すかすか"な二酸化炭素や水へ、化石資源を組み替えることで、化石資源の持っていた熱を取り出しています。
化学品源としての利用(図中右回り)
炭素と水素、そして酸素の組み合わせで、我々が使用する化学製品(プラスチック)や高付加価値製品(薬など)は出来ています。化石資源がもともと持つ炭化水素骨格(例えばC-C結合やC=O結合、ベンゼン環骨格など)をうまく活かしながら、化石資源の原子を組み替えることで製造されます。結合はエネルギーに相当する(別のポストで詳述します)ので、こうした組み替えが容易にできるのは、化石資源が高エネルギーだからということになりますね。使った後は、例えば焼却処理することで二酸化炭素へ分解されることになります。
我々は、化石資源の持つエネルギーをうまく使うことで、豊かな社会を実現してきました。しかしそれは、大量の二酸化炭素の排出に繋がりました。エネルギーという観点では底に位置するこの二酸化炭素をうまく活用していくことが、carbon neutralを実現する上で鍵となります。
参考文献
- European Commission, "EU Taxonomy: Commission begins expert consultations on Complementary Delegated Act covering certain nuclear and gas activities", https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_2 (accessed on 2022/02/02)