炭素・水素比に着目したエネルギー源の考察

化石燃料や水素などをエネルギー源として使うとき、我々は主としてその化学エネルギーを取り出しています。化学エネルギーは原子間の結合に含まれます。ですので我々は、化学反応によって結合を組み替え、その反応前後のエネルギー差分を利用しています(詳細は、化石燃料から取り出せるエネルギー量は?参照)。

今回は、どういった原子が含まれていると、燃料としてどういう特徴を有するのかについて考えます。

切りやすい結合、切りにくい結合

我々にとって、「使いやすい化学結合」と、「今後使っていくべき化学結合」があります。

まず、結合エネルギーの大きさについて整理します。結合エネルギーの大きさの代表値を以下にまとめます。
C-C結合 = 347 [kJ mol-1]
C-H結合 = 410 [kJ mol-1]
H-O結合 = 460 [kJ mol-1]
O=O結合 = 494 [kJ mol-1]
C=O結合 = 799 [kJ mol-1]
※これらは代表値であり、厳密には個々の原子で違います。

結合エネルギーが大きいものは、原子同士が強く束縛し合っている状態にあります。つまり、化学結合として切りにくいんです。一方で、結合エネルギーが小さいものは、その結合を切りやすいということになります。C-C結合 347 [kJ mol-1]は、C-H結合 410 [kJ mol-1]に比べて切りやすい=使いやすい、ということです。

我々の化石資源の利用は、石炭から始まりました。この石炭は、C-C結合を多く含みます。現在我々は化成品の製造などには、石油を主に使っています。石油は、石炭と同じくC-C結合を含みますが、C-H結合をより多く含みます。そして、天然ガスはEUタクソノミーに含まれる[1]ように、炭素中立の実現に向けてより有効活用していくことが求められています。この天然ガスの主成分はメタンであり、CH4とあらわされることからC-C結合を含んでいません。

つまり我々は、炭化水素については、C-C結合をより多く含むものを使ってきましたが、どんどんC-H結合が大きいものへと切り替えていっていることになります

carbon-hydrogen-ratio

参考文献

  1. European Commission, "EU Taxonomy: Commission begins expert consultations on Complementary Delegated Act covering certain nuclear and gas activities", https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_2 (accessed on 2022/02/02)

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