二酸化炭素の再資源化 -その1:二酸化炭素から何が作れる?
地球の大気中では、温室効果ガスである二酸化炭素が増大しています。それが地球温暖化へと繋がり、種々の環境問題を引き起こしているとされています。このポストシリーズでは、この二酸化炭素をどうやって減らしていくか、という点についてみていきます。
大気中の二酸化炭素
まず、そもそも二酸化炭素がどの程度いるのか、という点を見ておきましょう。米国商務省のGlobal Monitoring Laboratoryによれば、二酸化炭素濃度は418 ppmとあります(2022年1月の値)[1]。このppmはexpressed as parts per millionの略で、百万分の一のことです。ちなみにmole fractionでの値とありますので「二酸化炭素の分子数」を「空気を構成する全分子の数」で割った値ですね。ちなみにこの大気atmosphereですが、その質量は5.136 * 1018 [kg]もあります[2]。
二酸化炭素の濃度は、以前はもっと低かったとされています。そうした情報は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめているものが有名です。少し古いですが、IPCCの第5次報告書に掲載されている図[3]を引用します。
1950年あたりは、約310 ppm程度だったものが、年々増加してきていることが分かりますね。これが気温上昇と相関があり、かつ因果関係にあると考えられるため、二酸化炭素濃度を低減させることが世界的な動きとなっています。
二酸化炭素の再資源化
こうして増え続けている二酸化炭素を減らすには、二酸化炭素を何か他のものに変えていかなければいけません。二酸化炭素は、化学式でかけばCO2です。炭素が、酸素と結合しています。この二酸化炭素がどうやってできるかは、他のポストで取り上げました(我々はなぜ「化石資源」を使ってきたのか?、化石燃料から取り出せるエネルギー量は?参照)。化石資源を使い、最終的には燃焼させることで生成されてしまいます。ですから逆に、二酸化炭素から酸素をとってやれば、燃料や化成品の原料を作ることができます。
化学的には、酸素を除く反応として一般に水素化があります。水素と反応させて、酸素を取り除いてあげます。一例として「二酸化炭素を水素化によってメタンにする反応」は以下のように書けます。
CO2 + 4 H2 --> CH4 + 2 H2O …(1)
これはサバティエ反応と呼ばれます。この時に反応物として使う水素がクリーンであれば、カーボンニュートラルメタンが作れますね。
二酸化炭素の水素化によって作れる代表的な分子を、図にまとめてみました。合わせて、それぞれの用途についても記しています。
ここに記載した生成物(ギ酸、一酸化炭素、メタノール、エチレン、メタン)はそれぞれ相互変換ができます。その変換ルートと用途が分かる用に、並べなおした図も示しておきます。
参考文献
- Global Monitoring Laboratory (U.S. Department of Commerce), "Trends in Atmospheric Carbon Dioxide", https://gml.noaa.gov/ccgg/trends/ (accessed on 2022/02/21)
- Lide, David R., Handbook of Chemistry and Physics, Boca Raton, 92nd ed. 14-11.
- Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC), The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change 2013.