日本におけるエネルギーの流れ
日常生活で身近なエネルギーは電気だと思います。この電気ですが、日本では主に火力発電で賄われています(いろんな国の電源構成参照)。火力発電の燃料は主に天然ガス、石炭ですが、多少は石油も使われます。基本的にはこれらの燃料を燃やし、その発熱で水を蒸発させ、生じた蒸気がタービンを回すことで発電されていました(発電に伴うエネルギー変換参照)。
…というのが一般的な理解です。今回は、エネルギーの使われ方をもっと定量的に整理してみます。例えば、以下のような点についてみてみます:
- 発電に使われる燃料のうち、天然ガス、石炭、石油はどの程度の割合か?
- 発煙に伴うエネルギー損失はどの程度か?
- 発電用途以外には、天然ガス、石炭、石油はどの程度・何に使われているのか?
- 化石資源以外の燃料の使われ方と割合は?
日本におけるエネルギーフロー
まずおさらいしておきます。天然ガスや石油、石炭は、1次エネルギーと呼ばれるものです。これは、「変換・加工を経ていないエネルギー」を意味します(我々はどのくらいエネルギーを消費しているのか?参照)。それを燃料として得る電気は、2次エネルギーと呼ばれます。この2次エネルギーが、我々消費者によって使われますね。
その他に我々が使うエネルギーは、
- ガソリン
- 都市ガスやプロパンガス
等があります。これらも加工後なので、2次エネルギーですね。
1次エネルギーはどのくらいの量が日本では使われ、それらがどういった割合で2次エネルギーに加工され、最終的に消費サイトに届いているのでしょうか?
日本におけるエネルギーの流れは、各種統計資料を基にして、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の資料[1]にまとめられています。そちらを参考に作成したフロー図を以下に示します:
この図で、縦方向の大きさは、実際のエネルギー量に応じて描かれています。左上にスケールを示しています。
1次エネルギーの半分弱を石油が占め、天然ガス・石油は3割程度ずつですね。10%弱が再生可能エネルギーとなっています。
発電
まず天然ガスの大半、そして石炭のうち一般炭は、図の中央部下の「発電」にそのほとんどが使われます。一方で、発電に使われる石油はごくわずかですね。その他、原子力・水力・再生可能エネルギーは発電用途のみなので、1次エネルギー量=発電に使われる量となります。
この発電工程では、なんと半分以上のエネルギーが損失します。実際の発電転換工程における損失が大半ですが、送配電時のロスもあります。得られた電力は、運輸部門・民生部門・産業部門へ送配電されて、使用されることになります。
エネルギー転換
一方で、天然ガス・石油・石炭といった1次エネルギーは、図の中央部上の「エネルギー転換」にも使われています。その総量は、「発電」とほぼ同じ量のエネルギーですね。天然ガスからは都市ガスが得られ、石油からは輸送用燃料(ガソリンや軽油など)、暖房燃料(LPGや灯油)得られます。これら燃料は加熱や暖房、輸送用などとして、最終利用者によって燃やして使われます。
製品原料としての石油・石炭
1次エネルギーとしてはの石油の用途は、発電用途・熱用途の他にもあります。図の右「最終エネルギー」へ直接伸びている部分は、化学セクターで製造される石油製品です。プラスチックなどの高分子など、我々の身近にある製品を指しています。
石炭も同様に、図の右端にある製鉄セクターへ直接つながっています。これは、原料炭として、製鉄プロセスの還元剤として使用されているものですね。
エネルギー供給を持続可能なものに
この図はいろいろなことを教えてくれます。なかでも重要なものの一つは、電力は1次エネルギー消費の半分程度しかないということです。確かに再生可能エネルギーの積極利用は必要不可欠です。しかし、再エネの導入によって直接賄えるのは、日本のエネルギー消費の半分に過ぎません。
残りの半分、熱利用や燃料利用も、持続可能な方法で代替していかなければなりません。具体的には、再生可能エネルギーを使って、
- 二酸化炭素を再資源化して炭化水素を作る。例:カーボンフリーメタン
- 炭化水素以外の燃料を作る。例:アンモニア・水素
などでしょうか。このようなセクターは、つまり二酸化炭素の排出抑制が困難なセクターといえます。英語では、Hard-to-abate emissions sourcesと呼ばれます。International Energy Agency(IEA)では、以下を Hard-to-abate emissions sourcesの例として挙げています。
- aviation:航空
- shipping:船舶
- iron and steel production:製鉄
- chemicals manufacture:化学品製造
- high-temperature industrial heat:産業用高温熱
- long-distance and long-haul road transport:長距離輸送
- heat for buildings:暖房
発電以外のセクターをどうやって持続可能なものとしていくかも、解決しなければならない大きな問題ですね。
参考文献
- JST-CRDS, Panoramic View of the Environment and Energy Field 2019.
- IEA, The Future of Hydrogen, 2019.