エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その3

まず簡単に、前回までで触れた「エネルギーをためる方法」についておさらいします。

エネルギーキャリアとして「水素」が検討されています。重量エネルギー密度は大きいので、少ない重量で多くのエネルギーを運べます。しかし、体積エネルギー密度が小さいことが課題です(エネルギーを運ぶ:エネルギーキャリアとして水素?参照)。体積エネルギー密度を高くするための方策として、これまでにいくつか紹介してきました。前々回の記事(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その1参照)では、水素をぐっと冷やして液体にしてしまう、もしくは加圧してしまう方法について述べました。前回の記事(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その2参照)では、水素を物理的にくっつけたり(水素吸着材料)、化学的にくっつけたり(金属水素化物、ケミカルハイドライド)する方法について紹介しました。

今回のポストでは、これらエネルギーを蓄える方法を比較してみます。

エネルギー密度の比較

ここまでで取り上げたものについて、その体積密度と重量密度を図にまとめます。データは、アメリカエネルギー省DOE(U.S. Department of Energy)で取り上げられている代表値を採用しています[1,2]

volmetric-and-weight-density-of-energy-carrier

まず重量エネルギー密度に着目しましょう。これを見ると、圧縮水素、水素吸着材料、ケミカルハイドライドは、いずれも1 [kWh kg-1]を超える高い重量エネルギー密度を有していることが分かります。金属水素化物は、それらよりも低く0.5 [kW kg-1]を下回る値となっています。

この重量密度についてさらに詳細なまとめデータ[2]が、DOEから出ていました。以下に掲載します。

gravimetric-energy-density

この図では、縦軸は水素含有重量パーセントです。横軸は温度ですが、常温未満は水素吸着温度、常温以上は水素脱離温度となっています。金属水素化物(metal hydrides)、水素化物(chemical hydrogen)などは、より高い温度にしなければ水素を放出できないですね。一方で、水素吸着材料(adsorbents)は、かなり低い温度にしないと水素を吸着しません。より常温に近い温度で水素を吸収・放出するものがエネルギー的には好ましいので、これらについても改良の余地は大きいですね。

一つ前の図に戻ります。体積エネルギー密度についても、金属水素化物は0.5 [kWh L-1]と小さいですが、ケミカルハイドライドでは最も大きく1.5 [kWh L-1]に迫る値ですね。

重量密度・体積密度のいずれでも、電池に比べてると、大きなエネルギー密度となっていることは注目すべき点です。「電気をためる」といえば、電池を思い浮かべるかもしれませんが、化学物質の方が、より高い密度でエネルギーをためることができるんですね。

しかしながら、エネルギー密度を考える時には、必要となる容器の重量も考慮に入れなければなりません。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による車載容器に関するデータによれば、水素量 1 [kg]用で、35 [MPa]用、容積39 [L]のタンクの重量は23 [kg]とあります[3]1 [kg]の水素に対して容器23 [kg]です。ほとんど容器の重量になってしまいますね。

次回以降では、エネルギー密度の値について、より詳細にみていきます。

参考文献

  1. U.S. Department of Energy, Physical hydrogen storage, http://energy.gov/eere/fuelcells/physical-hydrogen-storage (accessed on 2016/02/18).
  2. U.S. Department of Energy, Material-based hydrogen storage, http://energy.gov/eere/fuelcells/materials-based-hydrogen-storage (accessed on 2021/03/25).
  3. NEDO, https://www.nedo.go.jp/content/100642948.pdf (accessed on 2022/02/04)

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