窒素の循環 -その2:窒素循環
アンモニアは人口を支える肥料の原料として、多く製造されています。人口は今後も増大を続け、また新たにエネルギーキャリアとしての用途もあることから、今後アンモニア製造量は増大し続けると考えられます。大気中の窒素を大量に固定した結果、今後地球はどうなるのか。窒素循環という観点から考察するシリーズ記事です。
第二弾である本記事では肥料用途以外のアンモニアと、窒素の循環についてみていきます。
エネルギーキャリアとしてのアンモニア
前回の記事(窒素の循環 -その1:肥料用途のアンモニア製造参照)では、非常に多くの量のアンモニアが地球上で人為的に製造されており、その主用途は肥料であることについて学びました。肥料以外の用途で、アンモニアは近年注目を浴びています。それはアンモニアのエネルギー・水素キャリアとしての用途です。このWEBサイトでもこれまでに触れてきましたが、少しおさらいをしておきます。
再生可能エネルギーの積極的な導入拡大が叫ばれていますが、その時間的・空間的な偏在性に起因した安定供給不安がそれを阻んでいます(再生可能エネルギーの利用にまつわる問題点参照)。この問題を回避すべく、余剰電力を貯蔵し、また消費地まで輸送するためのエネルギーキャリアについて世界的に検討・開発されています(エネルギーを貯めるいろんな方法を比較 その1 その2 その3)。その中でもアンモニアは、常圧下では−33.3 °Cで、また25 °Cでは約10 MPaで液化するため、水素などと比べて輸送に有利です。加えて、重量・体積エネルギー密度が大きいことも特徴です。例えばその燃焼熱は22.5 [MJ kg−1]であり、これはガソリンの約半分ほどです(エネルギーを貯めるいろんな方法を比較 その2 その3 その4 その5)。
エネルギーキャリアとしてのアンモニア需要も、将来的に増大していくと考えられます。事実、日本政府は明確にアンモニアへの注力を打ち出しています。そこで言及される一つの指標が、年間2,000 [万t]のアンモニアというものです[1]。これは、仮に日本国内の大手電力会社の全ての石炭火力発電で20%の混焼を実施した場合に、燃料として必要になるアンモニア量の試算値です。この年間約2,000 [万t]という量は、現在の世界全体におけるアンモニア貿易量に匹敵します[1]。
窒素の循環
肥料・キャリア用途として、アンモニアの需要は今後さらなる高まりを見せると考えられます。大気中の窒素を固定化し、アンモニアを製造し続けることの弊害はないでしょうか?
実は、窒素循環の乱れが大きな懸念となっています。具体的には、アンモニア使用量の増大に伴う土壌肥沃などです。土壌肥沃に関連し、よく話題にされるのがplanetary boundary[2]です。
これは地球上における限界点を示したもので、窒素の循環は危機的なレベルにあることを示しています。
※このplanetary boundaryは多くの議論に用いられる一方で、政治的であり科学的でないという批判もあります。
窒素循環の詳細を、次の記事でまとめます。
参考文献
- 経済産業省 燃料アンモニア導入官民協議会, 中間とりまとめ, 2021.
- Stockholm Resilience Centre, Planetary boundaries https://www.stockholmresilience.org/research/planetary-boundaries.html (accessed on 2022/03/08)