太陽電池だけで車は動かせるか!?

日常生活で見かける自動車。その多くはガソリン車(ガソリン車の排水?)ですが、最近は電気自動車や燃料電池自動車(燃料電池車での排水?)も目にしますよね。一方で、一昔前は(今でも?)たまに太陽電池車やソーラーカーについて耳にすることがあったかと思います。それが車道を走っている様子は見ないですし、普通に我々が買えるようなものでもありませんよね。なぜソーラーカーが普及していないのかを見てみます。

結論を言えば、そもそも太陽光のエネルギー密度が低いので、ソーラーカーでは車を走らせるだけのエネルギーを賄えないといえます。車を動かすのに必要な電力と、太陽光発電で供給できる電力を比較してみましょう。

車を動かすのに必要な電力

ガソリン車を例にとり、必要となるエネルギーを計算してみます。ガソリン車の燃費は、以前の記事(ガソリン車の排水?)でも取り上げました。

計算には、ガソリン車の燃費が必要になります。株式会社イードのe燃費(イーネンピ)によれば、2019-2020年でガソリン車部門一位は、スズキ自動車の「スイフト」のようです[1]。その燃費は、18.4 [km L-1][2]
参考文献
1. 株式会社イード, "『e燃費アワード2019-2020』を発表 実燃費ランキング、総合部門1位はトヨタ『アクア』", https://www.iid.co.jp/news/press/2020/031801.html (accessed on 2020/02/01)
2. e燃費, "e燃費アワード2019-2020", https://e-nenpi.com/award/award20192020/ (accessed on 2020/02/01)

ガソリン車の排水?

つまり、ガソリン1 [L]あたり18.4 [km]走れることになります。では、ガソリン1 [L]が持つエネルギー量はどの程度でしょうか。いろいろな燃料・エネルギーキャリアのエネルギー密度についても、これまでの記事で取り上げました(エネルギーを運ぶ:エネルギーキャリアとして水素?エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その4参照)。

体積ベースに直せば、33.36 [MJ L-1]です[1]
参考文献
石油連盟, “換算係数一覧”, https://www.paj.gr.jp/statis/kansan/ (accessed on 2021/10/07)

エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その4

以上の数値より、単位エネルギー量 [MJ] あたりの走行距離は約0.55 [km](= 18.4 [km L-1] / 33.36 [MJ L-1] = 0.55 [km MJ-1])と計算できます。

時速60 [km h-1]で走るとすると、1 [s]あたりに37.9 [kJ]ほどエネルギーを消費することになります。換言すれば、時速60キロで走る車が消費する電力量は37.9 [kW](=60 [km h-1] / 0.552 [km MJ-1] = 109 [MJ h-1] = (109 / 3600 =) 0.0303 [MJ s-1] = 30.3 [kJ s-1] = 37.9 [kW])です。

自動車上に設置した太陽電池が供給する電力

では次に、単位時間あたりに車に降り注ぐ太陽エネルギーを計算してみます。太陽光が持っているエネルギー密度は、以前の記事(太陽エネルギーを使おう!必要になる面積は?参照)で取り上げていました。

太陽光が有するエネルギー密度は、地球の緯度に依存します。赤道直下の部分では強い光が入射する一方で、例えば日本では、光が通過する空気量が大きいため、より弱い光が地表に注ぎます。Air mass 1.5における(=アメリカの平均緯度に相当[1])太陽光の入射エネルギーを積算すると、1003 [W m-2]が得られます。
参考文献
1. National Renewable Energy Laboratory (NREL), Statistical Review of World Energy, “Reference Air Mass 1.5 Spectra”, https://www.nrel.gov/grid/solar-resource/spectra-am1.5.html (accessed on 2022/02/03).

太陽エネルギーを使おう!必要になる面積は?

太陽光エネルギーを電力へ変換する効率は、太陽電池の種類・性能に依ります。アメリカのNational Renewable Energy Laboratory(NREL)が、歴代の太陽電池性能をまとめた資料を作成しています[1]。これによると、現状の最高効率は47.1%とあります。両者より、単位面積当たりに取り出せるエネルギーの最高値は472 [W m-2](= 1003 [W m-2] * 47.1 [%] / 100)と計算できます。

次に、車の大きさを考慮します。車のサイズはものによりますが、中型車だと8.16 [m2] 程度(= 4800 [mm]*1700 [mm])のようです[2]

これより、車上での発電量は3.85 [kW](= 472 [W m-2] * 8.16 [m2])となりました。

ソーラーカーは実用速度で走り続けられない

ここまでの計算によって、以下の数値が得られました

・60 [km h-1]で走行するガソリン車が単位時間当たりに消費するエネルギーは37.9 [kW]
・車上に設置した太陽電池から単位時間あたりに得られるエネルギーは3.85 [kW]

両者を比較すると、
3.85 [kW] / 37.9 [kW] * 100 = 10[%]
と分かります。つまり、必要なエネルギー量の10%しか太陽電池は発電出来ていないということになります。全然足りませんね。例えば5 [km h-1]程度のかなり遅い速度なら、理想的には太陽電池でも動作させ続けられるといえますが、実用的な運転速度では難しいですね。車体を抜本的に変える軽量化などをしても、エネルギー収支という観点から見るとソーラーカーはなかなか厳しそうですね。

参考文献

  1. National Renewable Energy Laboratory, https://www.nrel.gov/pv/cell-efficiency.html (accessed on 2022/03/18)
  2. マド本舗, step2. 車のサイズや敷地条件について考えましょう。 https://www.happy298.com/step2.html (accessed on 2021/03/21)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。