これまでに執筆した記事をまとめていきます。随時更新予定です。

我々が使うエネルギー

地球上ではこれまでに、多くのエネルギーが消費されてきました。1次エネルギー消費量は年間で5 * 1020 [J]に及び、この消費量は今後も増え続けると予想されます。1次エネルギーとは、化石資源や太陽光、バイオマスなど、自然界から得られ、加工されていないエネルギーを指します。その多くを、我々は化石資源から得ていました(我々はどのくらいエネルギーを消費しているのか?

我々はこれまでに化石資源に依存してきた

なぜ我々は、石炭、石油、天然ガスなどの化石資源を多く使ってきたのでしょうか?その理由は、「化石燃料が多くのエネルギーを持っているから」です(我々はなぜ「化石資源」を使ってきたのか?)。例えば、天然ガスの主成分であるCH4を1 [mol]燃焼すると810 [kJ]が得られ、またLPGの成分であるブタンを燃やすと2640 [kJ]が得られます(化石燃料から取り出せるエネルギー量は?)。C-C結合の方がC-H結合よりも弱く切りやすいため、それを多く含む石炭や石油がこれまでに使われてきました。より使いにくい天然ガスCH4を今後はより上手に使っていく必要があります(炭素・水素比に着目したエネルギー源の考察)。なおその他に、例えば石炭は固体、原油は液体であり、輸送しやすいという利点もあります。

火力発電では、こうして化石燃料を燃やすなどして電力を得ています。この時、燃料を燃やすことによって熱を生じさせ、その熱で水を蒸発し、その体積膨張を利用してタービンを回すことで発電しています(発電に伴うエネルギー変換)。他の発電も、入口は異なりますが、おおむね最後はタービンを回します。

再生可能エネルギーを積極的に利活用していく

しかし、化石資源の量には限りがあります。石油や天然ガスで賄える量はおおむね50年間程度とされており、資源量に限りがない持続可能なエネルギー供給形態を考えなければなりません。そこで目を向けるべきは、自然エネルギーです。地球上に1年間に降り注ぐ太陽光のエネルギーは、年間消費エネルギー量の約6,000倍にも相当します(我々はどのくらいエネルギーを消費しているのか?)。

再生可能エネルギー(再エネ)の導入は、全世界で積極的に拡充しています。ただ、どの発電方法でどれだけ実際に発電しているかは、国によって違います。ヨーロッパは、国同士が送電網で繋がっているので、相対的に再エネ導入率が高い国が出てきていますね(いろんな国の電源構成)。太陽光発電を考慮する場合、太陽エネルギーの密度は既知なので、あるエネルギー需要を賄うためにはどの程度の敷地面積が必要か計算できます(太陽エネルギーを使おう!必要になる面積は?)。さらに発展させれば、日本における再生可能エネルギー発電ポテンシャルと、日本のエネルギー需要を比較してみることもできます。電力消費は理想的には賄えるかもしれませんが、エネルギー需要全体を賄うのは無理そうです(日本におけるエネルギー消費は、国内の再エネで賄えるか?)。

日本国内のエネルギー利用を炭素中立にするために、太陽光発電などの再エネをどんどん入れればよいかというと、ことはそう単純ではありません。大きな問題は、再エネで発電できる時間・場所と、我々がエネルギーを使いたい時間・場所にミスマッチがあることです。(再生可能エネルギーの利用にまつわる問題点)。これを解決すべく、発電したエネルギーを一度蓄えることを考えます。そうした媒体は「エネルギーキャリア」と呼ばれ、その代表格は水素です(エネルギーを運ぶ:エネルギーキャリアとして水素?)。例えば再エネをいったん水素などへ転換し、需要地へ運んだ後、需要地で水素からエネルギーを取り出す、というスキームです。

エネルギーキャリアとしての水素を製造する場合、そのエネルギー源は再エネである必要があります。再エネを駆動力とした水素製造の代表例は、水の電気分解水電です。電解質に何を用いるかによって大別され、アルカリ水電解や固体高分子形水電解装置などがあります(水素の作り方 -その2:水の電気分解)。水電解水素は現状高コストであり、日本においては100 [円 Nm-3]程度です。これに対し、化石資源を原料として製造された水素の価格は1 [$ kg-1]程度です(水素の作り方 -その1:現状の作られ方と価格水素の作り方 -その4:水素源の推移)。コスト低減はグリーン水素の普及に不可欠であり、政府目標としては2030年時点で30 [円 Nm-3]、将来的には20 [円 Nm-3]が掲げられています(水素の作り方 -その3:水の電気分解のコスト)。どの程度のコストで水素が価格競争力を有するかは、セクターによって異なります(水素価格の目標値

エネルギーキャリアとしての水素にも問題はあります。水素は重量あたりのエネルギー密度は大きいですが、標準状態では体積当たりのエネルギー密度が小さいです。ですから、需要地まで運びにくいんですね。その解決には、例えば水素を冷却して液体状態に保つ、圧縮して小さくする、などがあります(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その1)。その他、他の化学品に転換するなども有効です(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その2)。どの方法が良いかは、エネルギー密度を見てみると判断し(エネルギー貯めるいろんな方法を比較 -その3 その4 その5)、需要量と輸送距離に応じて最適なキャリアが決定できます(海外からのクリーンエネルギー輸送)。

最終的にはエネルギー需要地(消費地)にて、水素やその派生物(メチルシクロヘキサンやアンモニア)などエネルギーキャリアからエネルギーが取り出されます。水素の場合は、水素エンジンや燃料電池(水素の使い方 -その2:燃料電池)等でエネルギーが直接取り出せます。一方で後者は多くの場合いったん水素へ戻されますが、その工程でもエネルギーが必要となります。どういった場所・場面でどのキャリアを選ぶかといった判断が必要です(水素キャリアから水素を取り出すときの話)。そのため、キャリアから水素を取り出さずに、直接用いるようなケースも想定されています。例えば、アンモニア(そして水素)は、火力発電の燃料として直接使用する検討がされています(発電のカーボンニュートラル化 -その1:コスト試算発電のカーボンニュートラル化 -その2)。

また、忘れてはならないことは、電力は一次エネルギー利用形態の一つに過ぎないという点です。そして日本における電力消費量は1次エネルギー消費の半分程度しかありません。つまり、再エネの導入によって直接賄えるのは、日本のエネルギー消費の半分に過ぎません。残りの半分、熱利用や燃料利用も、持続可能な方法で代替していかなければなりません(日本におけるエネルギーの流れ)。

もう一つ、二酸化炭素以外の循環にも目を向ける必要があります。例えば、アンモニアはこれまでに肥料用途での製造が主であり、多量の窒素が固定されてきました(窒素の循環 -その1:肥料用途のアンモニア製造)。人口は今後増えていくので肥料用途はかさみ、またエネルギーキャリアとしての利用も進めば、より多くの窒素が固定されると考えられます(窒素の循環 -その2:窒素循環)。その結果、硝酸イオンやアンモニウムイオンなどによる肥沃化や、不完全燃焼によって生じるNOxなどにより、窒素の循環が乱れると懸念されます(窒素の循環 -その3:窒素循環の具体量)。

再エネ電力や水素を活用した持続可能性への足掛かり

近年、水素はエネルギーキャリアとして注目されていますが、それ以外の用途も多くあります。現状、水素用途の多くを占めるものは、肥料原料となるアンモニア合成と石油精製です(水素の使い方 -その1:概要参照)。これに対し、水素を例えば二酸化炭素などと反応させることで、扱いやすい液体燃料や、化成品などを作ることが可能です(二酸化炭素の再資源化 -その1:二酸化炭素から何が作れる?)。

こうした次世代の水素利用について考えた時に、反応相手となる二酸化炭素をどこから持ってくるかが課題となります。二酸化炭素の量として、全世界における年間排出量は350億トン程度であり、日本では年間12.1億トンです(日本における二酸化炭素 -排出量)。二酸化炭素そのものの排出を抑制、ないしは再資源化することで、排出量を低減する動きがあります。日本政府は2050年で排出量ゼロを目指し、まず2030年には「2013年比で46%削減」を謳っています(日本における二酸化炭素 -削減目標)。二酸化炭素の回収については、こうした空気中のものを回収することと、工場で発生するものをうまく回収していくこと、この2点をしっかりと考えていく必要があります(二酸化炭素の再資源化 -その2:排ガスからの回収)。しかし、大気中の二酸化炭素濃度は、気温上昇を引き起こせると考えられるほどには高いですが、工業的に回収するうえでは低いです。そのため空気からの二酸化炭素の回収コストは高く、その低減に向けた技術開発が求められます(二酸化炭素の再資源化 -その3:二酸化炭素回収価格)。

サイドノート:自動車関連

自動車による排水をみると、燃料電池自動車では1 [km]走行あたり59 [g]程度の水を排出します(燃料電池車での排水?)。ガソリン車も同様に排水しています。こちらは、1 [km]あたり53 [g]と算出できます(ガソリン車の排水?)。

何度かメディアにも取り上げられるソーラーカーについて試算してみると、そもそも太陽光のエネルギー密度が低いので、ソーラーカーでは車を走らせるだけのエネルギーを賄えないと分かりました(太陽電池だけで車は動かせるか!?)。

その他

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